障害者のやりがいのある仕事の創出、IT人材不足の解消、そしてイノベーションの創出を目指して
「Not Charity, but a Chance!」
これは日本の障害者スポーツの父と呼ばれる故 中村裕医師の精神として伝えられている言葉です。障害者は守られる存在ではなく、一人の人間として対等に尊重される存在であり、障害者に必要なのは彼らが社会に参加する機会であると、企業に働きかけて障害者の雇用を創出してきました。
私は2015年から岐阜で障害者の就労支援に携わってきました。年間50人以上に支援を提供し、多くの人が就職をしていく一方で、自分たちの限界を感じてきました。就労支援は就職を希望する人に訓練や支援を提供し、就職活動をサポートするものですが、支援や訓練にはつながらない障害者の方が多くいることに気づきました。多くの障害者は支援を受けたいのではなく、「働きたい」―社会の中で自分たちが居場所と役割を得ることを望んでいるのです。
いま、全国に960万人以上いる障害者のうち、民間企業や公的機関で雇用されている障害者は70万人強にとどまっています。もちろん、就労可能な状態でない人もいるでしょうが、多くの障害者が仕事に就けていない状況にあります。
なぜ障害者の雇用が進まないのか。私がこれまでかかわってきた障害者の多くは、精神障害や発達障害のある人です。彼らは見た目には障害がわかりづらく、一般的に求められることに対応できない場合、「サボっている」「やる気がない」と誤解されがちです。そのため、なかなか就職する機会がありません。また、彼ら自身も、普通の高校や大学に進学をしてきた経験から、やりがいのある仕事・社会の役に立つ実感を得られる仕事を求めていますが、多くの障害者求人は軽作業や誰でもできるような仕事が中心で、彼らがやりがいを感じる仕事はなかなかありません。
一方で、社会は労働力の減少が今後ますます深刻となることが予測されます。また、産業構造の変化により、新たなニーズが生まれているにもかかわらず、働き手がいない状態。特にITの分野については、「IT人材は2030年には最大で79万人不足する」と経済産業省が発表されています。
働きたいと願う障害者と、人材不足のIT業界をどうにかつなげていけないか、そんな思いから、ディートランジットはスタートしました。ここで働く障害者は、スキルはあるけど一般企業で働くには不安がある人です。ディートランジットで働きながらIT業務の経験を積み、また企業に就職するためのコミュニケーション訓練や自己理解を習得し、社会に一歩踏み出す準備をしています。
これからの社会にイノベーションを起こしていくには、多様性は必須です。多様な視点が新たな気付きを与え、また多様な人がいることで安心して意見が言える環境が生まれます。実際に、多様性に寛容な企業は新規事業がうまれやすいという調査結果もあります。ディートランジット(D-transit)が、多様性促進(Diversity)、DX化(Digital Transformation)、そして夢(Dream)の経由地(Transit)となり、社会にイノベーションが起こるよう、皆様のご理解・ご協力を得ながら前進し続ける所存です。
代表取締役
後藤 千絵